前回、数研出版の数学副教材について、かなり厳しい評価を書きました。
クリアー、4プロセス、4STEP、サクシード。私がこれらの問題集をあまり評価していない理由について説明しました。
しかし、私が数研出版の副教材を評価していない理由は、それだけではありません。
そもそも、他の出版社にもっと優秀な問題集が存在するからです。
私は、これら4種類の問題集すべてに、上位互換と呼べる教材が存在すると考えています。
では、他の出版社の数学副教材はどうなのでしょうか。
今回は、私が数研出版より高く評価している数学の問題集を紹介していきます。
なお、今回紹介するのは主に学校で採用される副教材です。問題集自体は一般の人でも購入できるものが多いですが、解答の入手方法には注意が必要です。
クリアーよりもおすすめ――WIDE・マスグレードα・エクセル数学
まず、比較的易しい問題を中心に扱う副教材です。
私が高く評価しているのは、東京書籍の『WIDE』、啓林館の『マスグレードα』、実教出版の『エクセル数学』です。
この3冊に共通するのは、易しい問題から丁寧に学習できるように作られていることです。
特にWIDEとマスグレードαは、問題の難度が基本的に教科書の応用例題程度までに抑えられており、難しい入試問題まで無理に扱おうとはしていません。
その代わり、紙面が非常に丁寧に作られています。
レイアウトも綺麗で、解説も非常に分かりやすい。数学が苦手な生徒でも取り組みやすい問題集になっています。
一方、数研出版のクリアーは、この2冊よりも難しい問題を扱っています。
では、クリアーの方が優秀なのでしょうか。
私はそうは思いません。
そもそも、学校が4STEPや4プロセスではなく、クリアーを採用するのはなぜでしょうか。
おそらく、そこまで難しい問題を生徒に要求する必要がないからでしょう。
それなら、無理に難しい問題まで扱う必要があるのでしょうか。
教科書の内容をきちんと理解し、基本的な問題を自力で解けるようになる。それだけでも、数学が苦手な生徒にとっては十分大きな目標です。
むしろ、その目標を確実に達成できる教材の方が良いと思います。
以前から書いていますが、私は数学の問題集に、適切な高さの「階段」が必要だと考えています。
易しい問題集は、易しいままでいいのです。
一冊で難しい問題まで扱う必要はありません。物足りなくなったら、そのときに次の問題集へ進めばいい。
そう考えると、私はクリアーよりも、今回紹介した3冊を高く評価しています。
4プロセスよりもおすすめ――Prominence・アドバンスα
次に紹介したいのが、実教出版の『Prominence』と、啓林館の『アドバンスα』です。
この2冊は、数研出版の4プロセスより明らかに優秀だと思っています。
理由は単純です。
問題量が適切で、解説が非常に分かりやすいからです。
前回、4プロセスについて、問題量が多すぎるうえに、解説やレイアウトもあまり評価していないと書きました。
一方、Prominenceとアドバンスαは、問題数が比較的抑えられています。それでいて、必要な内容はきちんと収録されています。
さらに、この2冊は解説が本当に分かりやすい。
解説自体が非常に丁寧で、解答のレイアウトも綺麗です。この点については、どちらも優秀で、ほとんど差がないと思っています。
違いがあるとすれば、解説の色分けや問題のレイアウト、シャッフル問題の有無です。
Prominenceは、解説に色分けが用いられており、視覚的に理解しやすい工夫がされています。ただし、問題のレイアウト自体は、正直あまり綺麗ではありません。
一方、アドバンスαは問題のレイアウトも綺麗です。
さらに、アドバンスαにはシャッフル問題が用意されています。
単元ごとに問題を解いていると、どの解法を使えばいいのか、ある程度予想できてしまいます。しかし、さまざまな分野の問題が混ざると、自分で解法を判断しなければなりません。
そうした演習が用意されていることも、私が評価している理由の一つです。
こうした点を踏まえると、私はProminenceよりアドバンスαの方を多少高く評価しています。
とはいえ、どちらも十分に優秀な問題集です。解説の丁寧さはほとんど変わりませんし、正直なところ、どちらを採用しても大きな問題はないと思っています。
ちなみに、東京書籍には『STAGE』という問題集もあります。こちらも以前確認したことがありますが、正直なところ、詳しい内容を覚えていないため、今回は評価を控えます。
いずれにせよ、Prominenceとアドバンスαは、どちらも4プロセスよりはるかに高く評価しています。
これだけ優秀な問題集が他社に存在する以上、私には4プロセスを積極的に採用する理由が見つかりません。
4STEPに代わる問題集――PRIME・Hi-PRIME・例題から学ぶ
では、より幅広い難度の問題を扱う4STEPの代わりなら、どうでしょうか。
私が高く評価しているのは、東京書籍の『PRIME』『Hi-PRIME』、そして実教出版の『例題から学ぶ』です。
まず、PRIMEです。
この問題集の素晴らしいところは、重要な問題をきちんと網羅しているのに、問題量が過剰ではないことです。
私は前回、4STEPについて、問題の選定や難度の幅自体は悪くないと書きました。
しかし、4STEPは問題量が多すぎます。
数学が得意な生徒なら取り組めるかもしれませんが、全員があれだけの問題をきっちり仕上げられるわけではありません。
その点、PRIMEは非常によくできています。
重要な問題は十分に収録されており、網羅性も高い。それでいて、無駄に問題数を増やしているわけではありません。
もちろん、欠点もあります。
解説はそれほど丁寧ではありません。数学が苦手な生徒が独力で取り組むには、難しいと感じる部分もあるでしょう。
しかし、そもそもPRIMEは、数学がある程度得意な生徒を想定した問題集です。
例えば、開成や麻布、筑駒のような学校の生徒を想定するのであれば、解説が多少簡素でも、それほど問題にはならないと思います。
実際、私の知る限り、麻布高校でもPRIMEが採用されています。
これは非常に良い選択だと思っています。
学力の高い生徒に、十分な網羅性を持ちながら問題量を抑えた教材を与える。
私は、こうした教材選定を高く評価しています。
ちなみに、東京書籍には『Hi-PRIME』という、さらに難度を高めた問題集もあります。
こちらは、正直なところ、一般的な高校で採用する必要はほとんどないと思います。
問題の難度が高すぎるからです。
ただ、開成や筑駒のような学校の、さらに最上位の生徒たちであれば、十分に選択肢になるでしょう。
つまり、Hi-PRIMEが悪い問題集だというわけではありません。
非常に高い能力を持つ生徒を対象にするなら、難しい問題集にも意味がある。
大切なのは、誰に使わせるのかということです。
そして、もう一つ高く評価しているのが、実教出版の『例題から学ぶ』です。
この教材は、例題編と演習編に分かれています。
まず、純粋な問題集として評価するなら、演習編が非常に優秀です。
何より、問題のレイアウトが素晴らしい。
問題が綺麗に整理されており、非常に見やすい。さらに、解答のレイアウトも素晴らしく、解法を追いやすい。しかも、解説自体も非常に丁寧です。
私は以前から、問題集のレイアウトを非常に重要視しています。
問題が良くても、紙面がごちゃごちゃしていたら読む気が失せてしまいます。解答も同様です。
その点で、例題から学ぶの演習編は、4STEPよりもはるかに高く評価しています。
ただし、大きな欠点もあります。
それは、解答がデータでしか提供されておらず、紙の解答冊子がないことです。
これは本当に大きな欠点だと思っています。
いくら解答が綺麗でも、紙の解答冊子がなければ、問題を解くたびにデータを開かなければなりません。
問題集としてこれほど優秀なのだから、解答も冊子として販売してほしいと思っています。
ただし、この仕組みにはメリットもあります。
学校用の副教材は、問題集自体なら一般の人でも購入できます。しかし、解答冊子は学校経由でしか入手できないものが多く、個人で問題集を買っても解答が手に入らないことがあります。
その点、『例題から学ぶ』は解答がデータで提供されているため、解答冊子を購入する必要がありません。
つまり、学校で採用されていなくても、一般の人が問題集を購入し、解答を確認しながら勉強できるのです。
今回紹介した問題集の中で、学校で採用されていない人にも積極的に購入を勧められるのは、実質的に『例題から学ぶ』くらいだと思います。
もちろん、他の問題集でも中古で解答冊子を入手する方法はありますが。
サクシードに代わる問題集――例題から学ぶ
サクシードはどうでしょうか。そもそも最低最悪0点ですから比較する必要も無いのですが、強いて比較するならば『例題から学ぶ』です。
『例題から学ぶ』には、先述した内容に加えて、もう一つ優れた特徴があります。
それは、例題編と演習編を併用できることです。
前回、私はサクシードを酷評しましたが、サクシードは左側に重要例題、右側に演習問題を配置する構成になっています。
この形式自体は、悪くないと思っています。
そして、『例題から学ぶ』でも、例題編を開きながら演習編に取り組めば、同じような使い方ができます。
さらに、演習編には関連する例題編の問題番号が記載されているので、どの例題を参照すればいいのかも分かります。
つまり、純粋な問題集として使うなら4STEPの代替になり、例題編を併用すればサクシードの代替にもなるわけです。
このように、演習編だけでも非常に優秀であり、必要に応じて例題編も活用できる。
私は『例題から学ぶ』を、4STEPやサクシードよりもはるかに高く評価しています。
私なら、学校の教材選定をここまで重視する
ここまで、私が数研出版より高く評価している副教材を紹介してきました。
整理すると、次のようになります。
| 数研出版 | 私がより高く評価する教材 |
|---|---|
| クリアー | WIDE、マスグレードα、エクセル数学 |
| 4プロセス | アドバンスα、Prominence |
| 4STEP | PRIME、例題から学ぶ、Hi-PRIME(最上位層向け) |
| サクシード | 例題から学ぶ |
もちろん、難度が完全に一致する問題集同士の比較ではありません。
生徒の学力や目標によって、適切な教材は変わります。
しかし、だからこそ、私は数研出版の副教材を積極的に採用する理由が見つからないのです。
基礎を固めたいなら、もっと易しくて丁寧な問題集がある。
ある程度難しい問題まで扱いたいなら、問題量を抑えながら解説も充実した教材がある。
さらに高い難度まで扱いたいなら、網羅性と問題量のバランスが良い教材もある。
それなのに、なぜ数研出版の問題集を選ぶ必要があるのでしょうか。
ちなみに、私は自分の子供が高校へ進学するときにも、学校で採用している副教材を確認したいと思っています。
もし数研出版の副教材を採用していて、しかも大量の問題を厳しくこなさせる学校だったとしたら、正直なところ、私は自分の子供を通わせたくありません。
それくらい、学校の教材選定を重要視しています。
もちろん、問題集だけで学校のすべてが決まるわけではありません。
しかし、教材の選び方には、その学校がどのような教育をしようとしているのかが表れると思っています。
生徒が最後まで取り組める分量なのか。自力で理解できる解説なのか。無理なく難しい問題へ進めるのか。
そうした点を十分に検討していないのであれば、私はその学校の指導方針を信用できません。
学校の副教材は、生徒が自由に選べるものではありません。
学校が採用した問題集を購入し、指定された問題を解くことになります。
だからこそ、教師には教材を慎重に選ぶ責任があると思っています。
問題集は、教師が使わせたいものではなく、生徒が学力を身につけられるものを選ぶべきです。
それなのに、なぜ数研出版の問題集は、これほど多くの学校で採用されているのでしょうか。
次回は、その理由について、教師の立場から考えてみたいと思います。

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