前回までの記事では、自分の実力に対して高すぎる問題に挑み続けると、努力しているのに前へ進めない「足踏み」が起こる、という話をしました。
では、ここで一つ疑問があります。
足踏みしているなら、やめればいい。
自分に合った問題まで戻って、一段ずつ登ればいい。
理屈だけなら簡単です。
でも実際には、多くの人が自分に合わない勉強を続けます。難しい問題集を手放せない。できる人の勉強法を真似する。基礎へ戻ることを嫌がる。
なぜでしょうか。
私は、大きく三つ理由があると思っています。
難しい問題ほど「勉強した気」になる
難しい問題に30分悩む。
解けない。
解説を読む。
分からないところを考える。
気づけば1時間経っている。
こういう勉強は、ものすごく「勉強した感じ」がします。
疲れますし、苦労もしています。「今日はかなり頑張った」という満足感も得られます。
でも、一度こう考えてみてほしい。
その1時間で、何ができるようになったのでしょうか。
もちろん、難しい問題について長時間考えること自体が悪いわけではありません。
今持っている知識を組み合わせれば届きそうな問題なら、考えることには大きな意味があります。
問題は、その問題を解くために必要な基礎そのものが足りていない場合です。
知らない解法がいくつもある。基本的な処理もまだ安定していない。それなのに難問へ挑み、1時間かけて解説を理解する。
これでは、その1時間の多くが「できるようになる時間」ではなく、「分からないものと格闘する時間」になってしまうことがあります。
逆に、少し簡単な問題を20問解き、それまで曖昧だった処理を全部できるようにした方が、見た目は地味でも実力は増えているかもしれません。
どれだけ苦労したかと、どれだけ成長したかは別です。
勉強時間を増やしているのに成績が伸びない人は、一度「何時間勉強したか」ではなく、「その時間で何ができるようになったか」を考えてみてもいいと思います。
「できる人の勉強法」を真似してしまう
もう一つよくあるのが、できる人の真似です。
東大生がこの問題集を使っていた。
数学が得意な人は難しい問題を長時間考えている。
鉄緑会では大量の問題を解いている。
だから自分もやる。
でも、以前の記事でも書いた通り、同じことをしても同じ結果になるとは限りません。
その人がその勉強法を使えるのは、すでに土台ができているからかもしれないからです。
例えば、数学が非常に得意な人が難問を1時間考えるのと、基本的な解法がまだ十分に入っていない人が難問を1時間考えるのでは、同じ「1時間考える」でも中身が全く違います。
前者は、すでに持っている知識をどう組み合わせるか考えている。
後者は、そもそも必要な道具を持っていない。
外から見れば、どちらも難問に取り組んでいます。
でも、やっている学習は別物です。
鉄緑会についても同じです。
最上位層には、大量の新しい問題を解かせることが復習として機能します。新しい問題を解きながら、何度も同じ考え方を使うからです。
だからといって、
「鉄緑会が大量に問題を解かせているから、自分も大量に解けば伸びる」
とは限りません。
成功した人の「行動」だけを真似しても、その行動が成立している「前提条件」まではコピーできません。
大切なのは、
「できる人は何をしているか」
ではなく、
「なぜ、その人にはその方法が有効なのか」
を見ることだと思います。
「自分は本当はもっとできる」が邪魔をする
そして、これが一番厄介かもしれません。
人は、自分の実力を正確に見るのが結構苦手です。
模試で失敗した。
「今回は計算ミスが多かっただけ」
時間が足りなかった。
「時間さえあれば解けた」
問題が合わなかった。
「今回は相性が悪かった」
もちろん、本当にそういう場合もあります。
ただ、それが何度も続いているのであれば、そこまで含めて現在の実力です。
それでも、
「自分は本当はこんなレベルではない」
と思ってしまう。
すると、基礎へ戻れません。
簡単な問題集を見ると、
「これは自分がやるものではない」
と思ってしまう。
だから難しい問題を続ける。
解けない。
でもまた、
「本当なら解けるはず」
と思って難しい問題を続ける。
そして足踏みします。
『ワールドトリガー』の中に、
「オレが思っていたよりも、もっとずっと弱かったってことか」
という言葉があります。


私は、この感覚は勉強でもかなり重要だと思っています。
自分が弱いと認めろ、という話ではありません。
今の自分が、何をできて何をできないのかを正確に見る。
それだけです。
自分の現在地を低く見積もる必要もないし、高く見積もる必要もありません。
できるものはできる。
できないものはできない。
そこから始めればいい。
成長するためには、「現在地」を見るしかない
ここまで何度も「足踏み」の話を書いてきました。
結局、言いたいことはかなり単純です。
難しい問題をやったから伸びるわけではない。
できる人を真似したから伸びるわけでもない。
長時間勉強したから伸びるわけでもない。
今の自分に必要なことをやったときに伸びます。
そのためには、まず現在地を見なければいけません。
今、何ができるのか。
何ができないのか。
次に何をできるようにすればいいのか。
そこが分かれば、あとは一段ずつ登っていけばいい。
そして、ここまで「どうすれば効率よく学力を上げられるか」という話をしてきましたが、次からは少し違う話をしたいと思います。
そもそも、
私たちは、なぜ勉強するのでしょうか。
大学へ行くことは、本当に全員に必要なのでしょうか。

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