浪人は無駄なのか――現役合格を目指しながら、浪人という選択肢を残す

前回、高校生活では何かに本気で取り組んでいるのであれば、大学受験だけに時間を使わなくてもいいと書きました。では、その結果として受験に間に合わなかったらどうするのか。

ここで、最初にはっきり書いておきたいことがあります。

受験生本人には、最初から浪人を考えてほしくありません。

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本人は浪人を保険にしてはいけない

「今年ダメでも浪人すればいい」と思って受験勉強をしていたら、どうしても気が緩みます。受験生本人には、「今年で決める」くらいのつもりで、最後まで全力でやってほしいと思っています。間に合うかどうかを最初から計算して手を抜くのではなく、まずは目の前の受験に全力を出す。

ただ、本当に潰れてしまっては意味がありません。本人が限界に近づいているのであれば、そこは親や周囲の大人が見ておく必要があります。

一方で、親まで一緒になって「今年ダメなら終わり」「浪人は絶対に認めない」と考える必要はないと思っています。本人には目の前の受験に集中させながら、親の側では「本当に届かなければ、もう一年という選択肢もある」と持っておく。

私は、本人は浪人を保険にしてはいけない。でも親は、浪人という保険を取り上げてはいけない。くらいがちょうどいいと思っています。

誰にでも浪人を勧めたいわけではない

だから、私は全員に浪人を勧めたいわけではありません。「特にやりたいことはないけれど、とりあえず大学には行きたい」という人もいます。今の日本では大卒という資格そのものにも価値があるので、その考え方自体を否定するつもりはありません。

ただ、そのためにわざわざ一年、二年と使う必要があるのかと言われると、私はかなり疑問です。「まだ働きたくない」「何となくもう少し上の大学に行けたらいい」くらいなのであれば、浪人してもただ時間が延びるだけです。

一方で、本当に行きたい大学がある。そこでやりたいことがある。どうしてもそこへ行きたい。そういう人なら、私はもう一年使ってもいいと思っています。場合によっては、二年かかることだってあるでしょう。

例えば国立医学部や東京大学のように、非常に高い学力を要求される大学を本気で目指すのであれば、一年間で必ず届くとは限りません。それでも本人が本当にそこへ行きたいのであれば、「一年遅れるから」という理由だけで諦める必要はないと思っています。

だからこそ、生徒から「親が浪人はダメと言っているので、第一志望を下げます」と言われると、私はかなり違和感があります。もちろん家庭ごとに事情がありますし、経済的に本当に難しい家庭もあるでしょう。

ただ、浪人するからといって必ず予備校へ行かなければならないわけではありません。自宅で勉強する方法もありますし、必要ならアルバイトを組み合わせる方法だってあります。本当に行きたい場所があるのなら、どうすれば挑戦を続けられるのかを自分で考える。それも一つの経験だと思っています。

浪人すれば成績が上がるわけではない

もちろん、浪人すれば必ず成績が上がるわけではありません。私が見てきた感覚では、成績が上がる人もいる。ほとんど変わらない人もいる。むしろ下がる人もいます。浪人したら自動的に一年分成長する、なんてことはありません。

ただ、それでも浪人生活によって分かることがあります。

浪人生活で分かること

学校にいた頃は、時間割があります。授業があります。先生がいます。毎日学校へ行けば、ある程度は生活が進んでいきます。浪人すると、それがかなりなくなります。勉強するのか。しないのか。何時に起きるのか。一日をどう使うのか。どの大学を目指すのか。全部、自分に返ってきます。

そこで初めて、自分は思っていたほど努力できる人間ではなかったと気づくかもしれません。一人では生活を管理できないと分かるかもしれない。逆に、自分のペースで勉強する方が向いていると分かる人もいる。

本当にこの大学へ行きたいのか。自分は何をしたいのか。どういう環境なら頑張れるのか。そういうことを考える時間にもなります。

一年浪人して、結局成績がほとんど上がらなかった。受験だけを見れば、失敗だったと言えるかもしれません。でも、その一年を通して「自分はこういう人間なんだ」と分かったのであれば、その経験まで全部無駄だったとは私は思いません。

以前の記事で、私は学習について、その経験によって、次の自分が変わることだと書きました。浪人生活も同じです。

一年や二年の遠回りは失敗なのか

ただし、それは最初から浪人するつもりで手を抜いていいという意味ではありません。現役の一年は、現役の一年として全力でやる。それで届かなかったときに、まだ行きたい場所があるのなら、もう一度挑戦する。それでも届かなければ、そこでまた考えればいい。

浪人という一年そのものに価値があるわけではありません。でも、本当に行きたい場所がある人にとって、一年や二年遠回りすることが、人生全体で見てそれほど大きな失敗だとも私は思いません。

受験生本人は、まず目の前の受験に全力を尽くす。親は、その姿を見守りながら、もし届かなかったときに次の道を残しておく。

私は、それくらいの距離感がちょうどいいと思っています。

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この記事を書いた人

開成中学・高校を経て東京大学へ進学。現在は高校教員として数学・物理を中心に教え、進路指導も担当。

指導の中心は偏差値50前後の生徒ですが、これまで偏差値30程度から70程度まで、幅広い学力層の生徒を指導してきました。通常の授業に加え、希望者向けの応用授業も担当しています。

大切にしているのは、生徒個人に合った勉強法や教材を考えることです。

※このブログは所属先とは関係のない個人ブログです。

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