青チャートはなぜ普通の生徒には難しいのか――網羅系問題集の正しい使い方

以前、「良い教材とは何か」という記事を書きました。そこで少し触れた、青チャートや黄チャート、Focus Gold、NEW ACTION LEGENDのような網羅系問題集について、今回はもう少し具体的に書こうと思います。

先に言っておくと、私はこれらを悪い教材だとは思っていません。特にNEW ACTION LEGENDなんかは、網羅系の中ではかなり良い問題集だと思っています。

ただし、普通の生徒が最初から一人で使う教材としては、かなり難しい。

ここは分けて考えた方がいいと思っています。

目次

最上位層は、解答を自分で分解できる

最上位層であれば、いきなり青チャートでも普通に進められます。なぜかというと、解説を読んだときに、その解答を分解できるからです。

「ここはこの解法を使っている」
「ここで別の考え方を組み合わせている」
「この部分までは自力で出せないとまずい」
「ここから先は初見では思いつかなくても仕方ない」

こういう判断ができます。

つまり、問題が解けなかったとしても、

自分は何が分からなかったのか。

を自分で分析できる。

だから、多少難しい問題が混ざっていても問題ありません。解答を読めば、その問題から何を持ち帰ればいいのかを自分で選べるからです。

普通の生徒は「何が分からないのか」が分からない

でも、普通の生徒はそうではありません。そもそも青チャートの解説を読んで、何が分からないのかすら分からない。

私は、ここがかなり大きいと思っています。

例えば解説を読んで、「なるほど」とは思う。でも、本当に理解しているわけではない。なぜこの式変形をしたのか分からない。なぜここでこの定理を使ったのか分からない。その前提になっている基本事項が抜けているのかもしれない。でも、本人にはその区別がつかない。

だから、解答を一通り読んで、

「分かった気がする」

で次に進んでしまう。

この状態で網羅系問題集を何百問と進めても、かなり厳しいと思っています。

網羅系問題集は、基礎を繰り返す教材ではない

しかも、網羅系問題集は名前の通り、非常に多くの典型問題を一冊にまとめています。その代わり、その生徒が今必要としている基礎理論や、本当に基本的な問題だけを何度も繰り返すために作られているわけではありません。

もちろん基礎的な内容も載っています。ただ、数学がまだ十分にできない生徒からすると、その基礎を固めきる前に次々といろいろなタイプの問題が出てきます。

すると、

基本がまだ曖昧
↓
問題が解けない
↓
解説を読む
↓
何が分かっていないのか分からない
↓
何となく納得して次へ行く

という流れになりやすい。

これでは、かなり苦しい。

実際、私がこれまで教えてきた生徒の中でも、数学でなかなか伸びなかったり、途中で心が折れてしまったりした生徒の一部には、最初から青チャートや黄チャートに取り組んでいた生徒がいました。

もちろん、青チャートや黄チャートを使ったことが原因だと断定するつもりはありません。ただ、見ていると、

その教材を使うために必要な力がまだないのに、教材だけ先へ進んでいた

ということはかなりありました。

同じ教材でも、伸びる人と伸びない人がいる

一方で、数学が非常にできる生徒は同じ教材を使っても普通に伸びます。同じ青チャートを使っているのに、片方はどんどん力がつき、片方は何時間やってもあまり変わらない。

教材だけを見れば同じです。違うのは、解説から何を読み取れるかです。

だから私は、

「難関大を目指すなら青チャート」
「とりあえず黄チャートを一周」
「これ一冊で網羅できるからFocus Gold」

という選び方にはかなり疑問があります。

網羅系問題集は「問題データベース」として優秀

網羅系問題集の強みは、たくさんの問題が入っていることです。先生が必要な問題を指定する。ある程度できる生徒が、自分に必要な問題を選ぶ。学習した内容を後から確認する。そういう使い方なら、非常に便利です。

言ってしまえば、数学の問題データベースとして使うならかなり優秀です。

でも、数学がまだ十分にできない生徒に、「これを最初から順番にやっておけば大丈夫」と渡す教材ではないと思っています。

必要な問題を選ぶためにも数学力がいる。解説を読むためにも数学力がいる。そして、「自分の何が分かっていないのか」を判断するためにも数学力がいる。

数学ができないから問題集をやっているのに、その問題集を使いこなすために、すでにある程度数学ができる必要がある。

ここが網羅系問題集の難しいところだと思っています。

では、何から始めればいいのか

では、数学がまだそれほど得意ではない生徒は何から始めればいいのか。

私は、いきなり問題を大量に解く前に、もっと先にやることがあると思っています。

まずは、理論を理解することです。

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この記事を書いた人

開成中学・高校を経て東京大学へ進学。現在は高校教員として数学・物理を中心に教え、進路指導も担当。

指導の中心は偏差値50前後の生徒ですが、これまで偏差値30程度から70程度まで、幅広い学力層の生徒を指導してきました。通常の授業に加え、希望者向けの応用授業も担当しています。

大切にしているのは、生徒個人に合った勉強法や教材を考えることです。

※このブログは所属先とは関係のない個人ブログです。

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